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  since : 1996年07月
  update: 2008年11月21日
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    案件名                                           2007/07/24 配信
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ひったくりからの補償
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    患者名   ハンドルなし     担当医  魔笛序曲  先生  なかじー  先生
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    ●患者問診より●

    いつも楽しく読ませていただいております。

    去年の夏ごろ夜中に私の彼女がひったくりに遭いました。
    今年の初めに犯人(15、6歳の少年)が捕まり、少年の担当弁護士から連
    絡がありました。
    内容は「少年も反省しており、それ相応の補償をしたい」とのことでし
    た。

    彼女のバッグや中身等を合せると総額50万円くらいになります。
    しかし、実際に弁護士が提示してきた金額は、16万円と、到底納得出来
    るものではありませんでした。

    その後何度か電話をし「納得出来ません」と伝えたところ、「もう一度
    時価を計算して連絡します」と言われました。

    その後3ヶ月の間連絡はなく、先日こちらから連絡をしてみると「18万円
    のバッグでも6万円になります」と言われました。
    根拠を尋ねると「質屋で聞いた」とのことでした。

    「それでは同じ物は買えませんよね」と言うと「時価をお調べするのが
    難しいので、それなら、そちらで起訴を起こしていただいた方がいいか
    もしれませんね」等と軽くあしらわれてしまいました。

    このようなケースでは精神的な慰謝料等は認められないのでしょうか。
    弁護士の誠意のない対応も非常に不愉快です。

    せめて盗られたものが戻るくらいの賠償金を請求することは出来ないの
    でしょうか。ご教授お願いします。



    ●担当医所見●     魔笛序曲  先生

    >時価をお調べするのが難しいので、それなら、そちらで起訴を起こして
    >いただいた方がいいかもしれませんね

    弁償するのは弁護士ではなく親です。
    ですので、親が出ししぶっているのでしょう。
    ナメてますね。


    >せめて盗られたものが戻るくらいの賠償金を請求することは出来ないの
    >でしょうか。

    未成年者(少年)の事件は家裁に行きます。
    そこで親、保護者等と面接し、処分の決定がされます。
    改正少年法9条の2を利用して、少年事件でも被害者意見が聞いてもらえ
    るようになりました。

    -------------------

    家庭裁判所は、犯罪少年又は触法少年に係る保護事件の被害者等から、
    被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出があるときは、
    自らこれを聴取し、又は調査官に命じてこれを聴取させるものとされて
    いる。(少年法9条の2)

    -------------------


    被害者からの聴取内容は処罰に影響します。
    「弁償の交渉が決裂した場合、

    ・不当に低い金額を提示された。
    ・よって賠償もしてもらっていない。
    ・誠意のない態度をとられていて反省が感じられない。

    というような意見を調査官へ提出します」等と言って圧力をかけてみて
    はいかがでしょうか。

    「逆にこちらから提示した金額を賠償するならば、寛大な処分を望む旨
    の嘆願書を出す」等と言って交渉してみてはいかがでしょう。

    訴訟も有効ですが、恐らく本人には金がありません。
    裁判で勝ったとしても取れない可能性が高いです。
    弁済義務は本人にあるので、親に請求は出来ません。
    判決が出た債権(賠償金)の時効は10年ありますが、10年後に払うとは
    とても思えません。

    ないところからは取れませんので、親が代位弁済に応じてくれるように
    交渉の場へ引きずりだす作戦が有効かと思われます。



    ●担当医所見●     なかじー  先生

    >このようなケースでは精神的な慰謝料等は認められないのでしょうか。

    わが国では、物損について慰謝料は基本的に認めていないので、物的損
    害だけでは厳しいかもしれません。
    ひったくり行為によって被害者が精神的に傷つき対人恐怖症になった、
    といった客観的な被害が立証出来れば可能でしょうが、いまさら言うの
    もおかしいですね。


    >せめて盗られたものが戻るくらいの賠償金を請求することは出来ないの
    >でしょうか。

    被害者から見ると理不尽極まりないことですが、相手側弁護士の言って
    いることにも一理あることは認識すべきです。

    こうした損害賠償をする場合は、一般的には、損害発生時の損害品の価
    額を賠償します。
    たとえば10万円で買ったものでも、1年使用すればその価額は、10万円で
    はなくなります。
    モノにより価額は変わりますが、相談者の言われる「50万円」というの
    は、恐らく新品価格を言っていると思いますので、その金額丸々という
    のは、通らない話だということを認識すべきです。

    被害者からは見ると本当に理不尽だと思われるのは当然ですが、現実の
    損害賠償は、使用した分の価値は減額して払うのが妥当とされています。

    また一般論でいうと、こうしたひったくり被害に遭われた方のほとんど
    が一切の補償をされず、泣き寝入りさせられているのが現状だと聞きま
    す。
    そうした状況では、いくばくかでも賠償してもらうのは不幸中の幸いと
    考えるべきでしょう。


    【魔笛序曲先生へ質問】

    >被害者からの聴取内容は処罰に影響します。

    今回のケースでは弁護士が介在し、実際に被害者に対して賠償する意向
    を伝えている以上、調査官は取り合わないのではないでしょうか。

    弁護士の発した言葉には一定以上の信頼性が置かれますから、弁護士か
    ら「損害について妥当な金額を提示したが、納得してもらえない」と言
    われればそれでおしまいの気がします。

    「賠償に応じない」ことと「賠償には応じるが、金額は妥当なもの」と
    は次元がまったく違います。

    加害者といえども、不当な賠償金額を払わされる義務はないでしょう。


    また、

    >逆にこちらから提示した金額を賠償するならば、寛大な処分を望む旨の
    >嘆願書を出す

    こんなことを弁護士に言ったら、マズイのはないでしょうか。
    これって恐喝にあたりませんか。


    >ないところからは取れませんので、親が代位弁済に応じてくれるように
    >交渉の場へ引きずりだす作戦が有効かと思われます。

    これもおかしいのではないでしょうか。
    弁護士を雇ったのは、15、6歳の少年ではなく、その親でしょう。
    ということは弁護士と交渉することは、親と交渉しているのと同じこと
    ですよね。
    現状こそが、まさに親が子供の不始末の尻拭いをするために弁護士を使
    って交渉しているのではないでしょうか。

    法律に明るいわけではないので的外れな質問かもしれませんが、いかが
    なものでしょうか。



    ●なかじー先生への回答●     魔笛序曲  先生

    >今回のケースでは弁護士が介在し、実際に被害者に対して賠償する意向
    >を伝えている以上、調査官は取り合わないのではないでしょうか。

    少年事件には必ず弁護士がつきます。
    100%弁護士が介入します。

    被害者側からの聴取を処遇の参考にするという改正少年法9条の2が弁護
    士が介入すれば、調査官が取り合わないというのであれば全く意味がな
    い法律となります。
    100%弁護士が介入するという条件の元の改正された法律ですので、取り
    合わないということはないかと思われます。


    また、

    >こうした損害賠償をする場合は、一般的には、損害発生時の損害品の価
    >額を賠償します。

    保険であれば補償は時価となるのでしょうが、これは「ひったくり」と
    いう不法行為における示談交渉です。

    賠償や謝罪の有無、内容については少年の処遇に大いに影響されます。
    ですので、必死で示談をとりつけ被害者からの嘆願書を提出するまで持
    っていきたいのが、まともな親の考えです。

    裁判になれば時価相応分しか認められないでしょうが、保険の判断や法
    的判断ではなく示談の段階ですので、まだ交渉の余地があるかと思われ
    ます。

    また今からの通院でも、不安神経症の診断が容易にとれるでしょうから
    相談者の希望する「慰謝料」取れるのではないかと思われます。


    >これもおかしいのではないでしょうか。
    >弁護士を雇ったのは、15、6歳の少年ではなく、その親でしょう。
    >ということは弁護士と交渉することは、親と交渉しているのと同じこと
    >ですよね。
    >現状こそが、まさに親が子供の不始末の尻拭いをするために弁護士を使
    >って交渉しているのではないでしょうか。

    前述のように放置子でも弁護士はつきますし、いいかげんな弁護士が適
    当に判断している可能性もあります。
    また親対弁護士と親対被害者の直接交渉では、親の心理的負担が全く違
    います。

    また個々のケースによりますが、責任能力のある未成年者(15歳でもあ
    てはまる)の犯罪について、「親は監督義務を怠った」として不法行為
    責任(民法第709条)で訴えることも出来ます。

    ここまでしなくても「謝罪に来させる」等で親を交渉の場に引っぱりだ
    すのも手だと思いますが。


    >こんなことを弁護士に言ったら、マズイのはないでしょうか。

    嘆願書は処罰に大いに影響しますので、民事上の補償(賠償)とあわせ
    て抱き合わせで交渉されますよ。
    「慰謝料をちゃんとくれるなら告訴しない」なんて、痴漢でもよくある
    話です。


    >これって恐喝にあたりませんか。

    恐喝とは「暴力や相手の公表出来ない弱みを握る等して脅迫すること等
    で相手を畏怖困惑させ、金銭その他を脅し取ること」です。

    相手の公表出来ない弱みでもありませんし、畏怖困惑もさせてませんの
    であてはまらないと思われます。


    >また一般論でいうと、こうしたひったくり被害に遭われた方のほとんど
    >が一切の補償をされず、泣き寝入りさせられているのが現状だと聞きま
    >す。
    >そうした状況では、いくばくかでも賠償してもらうのは不幸中の幸いと
    >考えるべきでしょう。

    それは犯人が捕まらない場合や、犯人が三国人の場合だと思います。
    ひったくりの場合はほとんど犯人が捕まりませんから。

    犯人が捕まった場合(しかもそれが15歳だと)、処遇に関わってくるの
    で大抵親が弁護士が示談交渉してきます。
    なので、納得が出来るまで交渉すればいいと思います。

    この相談内容のバックグラウンドや詳しい経過は分かりません。
    既に親が謝罪に来ていたり、どうみても50万円には見えないようなカバ
    ンとガラクタであれば、「50万円払え」という請求はただの輩です。

    しかし、この文面ではそこまで読み取れませんし、弁護士や相手の親に
    誠意は感じられないと思いましたので、この回答となりました。



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